なみのりいるかの夢

しばらくは雑記です。

講演会 金属うんちを持つエビ

先日の博物ふぇすてぃばるにていくつかの講演会があったのですが、「熱水噴出孔に生きる 金属うんちを持つエビ」を聞いてきました。

博物ふぇすてぃばる!

 

講演会の先生は金沢大学のロバートジェンキンズ氏です。通称ロバ研で化石を研究していて古生物学から地球生物学(geobiology)をメインとされています。

ジェンキンズ研究室のページ

今回はインドの深海に生息するミリカリスについでなのですが、簡単な深海についてのまとめから入っていきました。

地球の7割は海なのですが、その海の9割は深海と呼ばれる深い海です。そこには熱水鉱床と呼ばれる、地球の内部と表層をつなぐ場所があり地球内のエネルギーが湧き出しています。深海と言う強い水圧がかかり、太陽の光もなく、高温の湧水から2度まで下がる極限環境の中、生態系が成立しています。
極限環境である熱水鉱床にはチューブワームやはおりむしなど硫化水素やメタンを利用するバクテリアを共生させた生物がいます。

地球を支配して居るのはと生物学者に聞くと、微生物と答えが返ってくるそうなのですが、地球上のさまざまな化学反応は微生物が起こしているとも言えるそうなのです。

ここでロバートジェンキンズ氏の研究の1つが紹介されました。アナガッチンダーという装置で相模湾の水深1000mで巣穴の型取りをしたそうです。巣穴を作ってるのは5億年前に出現したキヌタガイという二枚貝。キヌタイガイはエラのなかに硫化水素を利用するバクテリアを共生させています。

 

ちょっと説明を飛ばしてメインのエビの話に移ります。インド洋水深2500〜3000mの熱水鉱床にリミカリス(Rimicaris)はいます。頭の甲羅の内側、表面に酸化鉄を含むバクテリア層があり、脚のふさにも鉄酸化物がみられます。

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この共生しているバクテリアは硫化水素を餌に育ち、黄銅鉱、黄鉄鉱、硫酸バリウム、亜鉛が殻の表面に沈殿していきます。これらの鉱物が沈殿するとバクテリアの生育が悪化する為に、クリーニングレッグで掃除して口に入れていると思われます。

詳しく調べる為に、樹脂に埋め込んで輪切りにしてみたところ、胃、消化器官に鉱物濃縮がみられました。

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鉱物濃縮(うんち)が連続してないので、食べて休んでのバイオリズムがあると推測されるとの事。実は深海でも熱水の量が潮の満ち引きで変わるんだそうです。2mくらいの潮位の違いが深海までつながっているなんてすごいですよね。のちの質疑応答で出たのですが、研究された方の観察により、食べた物は大体4時間ぐらいで排泄されるようです。

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そしてこの食べた鉱物が胃、消化器官で粉砕されていて鉄酸化物はそのまま、黄鉄鉱が減っていることから、消化器官の中で硫化鉱物の溶解がおきているのではないかとの事でした。食べた金属粒を細かく砕いてしまうのですね。

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さらに、このリミカリスは水銀量が他の同域の生物より少ないそうです。また、赤い鉄さびバージョンと黒い硫化鉱物メインのリミカリスが同域に生息しているそうです。共生するバクテリアが違うのかしら?


このリミカリスは海外で2週間の飼育実績があるそうです。しかし、圧力をかけ同じ環境に出来ても熱水鉱床が無いので排泄物の詳しいデータはないそうなのですよ。とはいえ、深海からの採取によって、排泄物自体の構成は分かっているそうで、10〜20%が有機物で残りが全て鉱物なんだそうです。

 

生物濃縮の方向でとても面白いことになりそうなので、この研究は追いかけていきたいです。

最後にこのリミカリスはフリーの3Dデータが存在いたします。CCライセンスですので個人でお楽しみ下さい。

 3D-CT深海生物 - カイレイツノナシオハラエビ

 他の生物のデータもあります!

世の中まだまだ興味のある事は尽きないですね。