なみのりいるかの夢

しばらくは雑記です。

映画 ネタばれあり「ペンギン・ハイウェイ」

映画を見て、原作の小説を読み返して、色々気になる点が色々と出て来たので、もう一度映画を観に行ってきました。

映画『ペンギン・ハイウェイ』公式サイト

以下ネタバレありの感想です。

 

OPはアデリーペンギンのPV的で最高です。よたよたと進む中、道路を横断し、猫に襲われて水路を飛ぶように泳ぎ、〈海〉へとつながる藪へと進む姿は可愛いです。後日の聞き取りで、ぶつかった車が凹んだのにペンギンは無事だったのも出ています。

SF的な面白さのネタバレなくこの映画を紹介すると、少年とお姉さんとおっぱいになるのですが、楽園追放が尻アニメとしか言えないのと同じと言ってる方がいましたが、海の事もお姉さんの正体も言えないですから、おっぱいに集約しちゃうのもしょうがないのかな。でも、好きなものとしてアオヤマ君はお姉さんのおっぱいをちゃんと考察しています。お母さんと比較したり、お椀二つと比べてみたり、牛のおっぱいと比べたり、シロナガスクジラのおっぱい(原作)に想いを馳せたりと真剣に向き合ってます。考察についてはパンフレットにアオヤマ君ノートがありますので気になる方はパンフレットをどうぞ。

結構早くからペンギンは出ているのですが、お姉さんがペンギンを出せる事がわかるのは歯科医院で「スタニスワフ症候群」のお話の後です。この病名はSF小説「ソラリス」の作者、スタニスワフ・レムから付けられた名前なんだそうです。「ソラリス」を読むと切なさが倍になるので読んでみて下さい。

コーラの缶がペンギンに変化するシーンは何度でも見たいシーンです。ぽてっと落ちた後の姿も可愛い!お姉さんが出したペンギンなので本物のアデリーペンギンとはちょっと違う何かなんですよね。このペンギンはウチダ君に保護されてペンタと名付けられた個体と同じなのかな。ウチダ君とペンタのからみも可愛いんですよ!アデリーペンギンに似ているとはいえ、餌を食べずペンギンエネルギーで動いてるペンタは、鳴き声が本物とは違うんです。可愛く「きゅぅ?」って鳴くんですよ!餌を食べないなら臭いもしないんだろうし、あのモフモフなアデリーペンギンが触れてきゅぅって鳴いて懐くなんて羨ましいです。でも、可愛いペンタはアオヤマ君に相談しておそらく水族館へ電車で一緒に移動しようとする途中で元のコーラの缶に戻ってしまいます。コーラの缶へ戻る時、ペンタはよたよたとゲージから出て、苦しそうにして足元から風が出て、最後に顔がぐるっとして消えていきます。苦しそうな顔が見ていて辛いですよ。

 ハマモトさんの見つけた不思議な物体〈海〉の研究をアオヤマ君とウチダ君の3人で始めるシーンは、小学生の出来る範囲での最高な研究施設になっていて、素晴らしいです。形状変化の詳しい観察ノートもしっかりとしていて、見習いたいくらいです。海の表現も表面のさざ波から、波立って集まり小型の海を大砲のように放出するところが不思議で綺麗ですごく良いです。小説にもあったメビウスとトライアングルも見てみたかった。夏休みの研究的な何日かあって〈海〉がスズキ君達に見つかり、お姉さんとペンギン達が一堂に会して謎解きのピースがそろってきます。

〈海〉そして海を壊す「ペンギン」ペンギンを出す「お姉さん」ペンギンを食べる「ジャバウォック」、海から離れると消えるペンギンに、体調の悪くなるお姉さん。これらのピースを結び付けて「エウレカ」ですよ。悲しいけれどもアオヤマ君はそれを解決しないわけにはいかなかったんです。

〈海〉をめぐる大人達と子供のあれこれなんですが、ハマモトさんのお父さんが娘の研究ノートを見てしまったのはちょっと残念。原作の「本当に大切な研究のことは、うかつに人にはしゃべらんもんです」というキャラから外れる気がするんですよ。なんというか、アオヤマ君のお父さんが素敵なのでハマモトさんのお父さんにも研究者的にかっこよくあって欲しかったです。大人達に得意げに〈海〉をしゃべってしまうスズキ君と、研究を取り上げられたハマモトさんの怒りは、原作以上に分かりやすくて良かった。

〈海〉があふれてからのアオヤマ君はかっこいいですよね。わからないものがあふれている中、分かっている事を実行出来るかっこよさが小学生とは思えません。学校を抜け出してお姉さんを探し、「海辺のカフェ」でお姉さんと出会って額を突き合せたり、頭を抱きしめてもらったりと羨ましい。

お姉さんと出会ってからのやり取りが切ないんですが「お姉さんは人間ではない」って言い切ってしまう所がアオヤマ君の強いところなんでしょうか。お姉さんは、近所の胸の大きな優しいお姉さんという概念としてのお姉さんだったと思うのですが、それでも育った海辺の町や両親の記憶、部屋にある写真などこの世界にとても根付いている存在なんですよね。それでも、お姉さんは「私は人間でない」と受け入れるます。アオヤマ君の仮説では〈海〉は世界の果てであり、この世界の穴であり、ペンギンはその穴を修理するために存在していて、お姉さんはペンギンに近い存在なんです。だから人間ではないんです。

ここからはペンギン祭りです。色々な物がペンギンに変わって群れになってお姉さんとアオヤマ君を〈海〉へと導きます。スピード感にあふれるペンギンパレードは見ごたえがありました。一変して〈海〉の中の海に浮かぶペンギン筏に笑いを持っていかれましたけど!〈海〉の中の映像は綺麗で切なくて不思議なんですが、もっとペンギンを出して欲しかった!研究者達のいる場所までの道とか広場とかもっとペンギンがいて欲しかったです。さらに言えば、飛んでいくペンギンももっとたくさんペンギンが見たかった!壊れた〈海〉の流れる中とか、もっと泳いでいて欲しかったです。

「この謎を解いてごらん。どうだ。君にはできるか」からの謎解きが「それが君の答えか、少年?」と、アオヤマ君の出した答えが切ないですね。アオヤマ仮説にすぎないから、〈海〉を少し残せば、とお姉さんを存在する方向に進んでも、賢い少年は世界の穴は修復しないといけないと分かっているんですよね。お姉さんとの別れは必然であるからアオヤマ君は泣かないでしょうね。

ひと夏の冒険はワクワクして切なくて、終わると寂しい物なのです。それでもアオヤマ君はいつか世界の果てにたどり着いてお姉さんに会えたら良いなと思います。小説の終わりにあるお父さんとの会話で「それでも 、みんな世界の果てを見なくてはならない」にぐっと心にきました。映画だと原作に無いペンギン号を見つけるシーンが追加されていて、もしかしたらお姉さんとアオヤマ君は会えるかもしれないという余韻が甘く切なくありました。

 「ソラリス」を読んだ後だと、アオヤマ君がお姉さんにもう一度会えるって確信してる事が同じでグッときます。そしてEDの「Good Night」は原作だとお姉さんに言いたいセリフとして出てきます。アオヤマ君ノートにもありますが、夜寝る前に言いたかったのに言えなかったというのが切なくて悲しい言葉なんですよ。それをEDに持ってくるのは本当に泣けます。

 映画では省略されたウチダ君の研究はすごい考えさせられるので、映画が気に入った人は原作の小説を読んでみて下さい。そしてハードSFが大丈夫でしたら「ソラリス」も是非!

 

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

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