なみのりいるかの夢

しばらくは雑記です。

ミツクリザメの解剖を見てきたよ!

下田海中水族館にて50周年記念のミツクリザメ解剖見学会に参加してきました。

伊豆下田 下田海中水族館オフィシャルサイト

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50周年記念なので様々なイベントがありましたが、私としてはこちらが1番のメインイベントでした。なにせ100例ちょっとの水揚げしかなくさらに生体サンプルを展示される機会も少ない深海性の鮫です。剥製や冷凍標本であれば常時展示の水族館や博物館がありますので見ることは可能ですが、解剖を説明付きで見れるのは中々無いかと思います。貴重な機会を与えて下さった下田海中水族館のスタッフの方々と東海大学海洋学部の田中彰(sho tanaka)教授、ありがとうございます。

 この後解剖図がありますので苦手な方はお気を付け下さいませ。

公開された冷凍標本は2体、そのうちの1体を解剖して頂きました。

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こちらの写真は展示用の個体。

軟骨魚類と言うだけあって身体はぐにゃぐにゃです。

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どちらも採取時期などの詳細を明記されていたのですが、写真を撮り忘れてしまったので残念です。展示の2匹とも雄、採取場所は水深50m程との事。まだ産まれてそれほど時間の経っていない仔であるとの事。

ミツクリザメは典型的なサメの形をしていて、背鰭2、胸鰭1対、腹鰭1対、尻ビレ、尾ビレとなり、鰓孔は5対で歯も何列かあり抜け替わっていつも新しい歯が前面にあるとの事。歯の形状から餌を引っ掛けて食べていると推測されるのでイカなどが主食では無いかと考えられているそうです。舌も結構大きかった!

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サメですから鼻に海水を通して餌の匂いを感じ取ったり、前に突き出したゴブリンシャークの元となったテングザメの名が表すように長い鼻のような突起に沢山あるロレンチーニ器官と言う餌となる生物の発生する電流を感じ取れる電気受容感覚で海底の中の餌を探す事が出来ます。
顎が前に突き出すので海底の餌が捕まえやすいみたいですね。おそらく、海底を這うように泳ぎ餌を採りいらない砂や泥は鰓から排出してるとの事。
成熟した個体は5m、田中先生は3mを解剖したことがあるそうですがまだ成熟していなかったとの事。ちなみに今回のは1mぐらいでした。
サメは卵胎生ですが、ミツクリザメの妊娠中の雌はまだ確認されていないとの事。腹部に一筋の線があるので、他のサメの例を考えると胎内で栄養の詰まったお腹があり、大きい標本は痕跡が見られないので、産まれると体に吸収され線が消えると推測されるそうです。

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今回の標本は2体とも雄でした。軟骨から変化したクラスパーが1対あり、その間に排泄口がありました。
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鱗は泳ぎやすいザラザラな鮫肌でしたご、仔であるので成体に比べまだまだらしいですが、触らして頂いたところ立派な鮫肌だと思いました!身体の左右にはしっかりと分かる側線も観察できました。
さて、ここからメインの解剖です。出刃庖丁を使いサクサクと捌かれています。筋肉は近い仲間だとシロワニやオオワニの様な硬い筋肉ではなく、深海なので柔らかくぶよぶよしてました。
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腹腔いっぱいにぷにぷにする白い肝臓が1対あり、前の胸腔に赤い心臓がありました。モウカザメなどでは心臓は珍味らしいですよ!深海のサメは浮袋が使えないので肝臓に脂を貯めて浮力を調整しているそうです。肝油ですね。また、化粧品によく使われているスクワレンも多く含まれています。
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右から胃、白い細長い胃で消化する酵素を出す膵臓、赤茶の細長い膵臓が見えます。
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右下は胃、左下が腸、腸の終わりにサメやエイに特徴的な直腸線がちょこんと見えます。背骨の周りに腎臓があり、その下の薄い赤いヒダに白い小さな固まりがあり、恐らく精巣が出来るところだと思われるとの事!
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胃の中は消化されていてあまりよく分からなかったのですが、オリーブ色の泥状でおそらくゴカイと思われる物が観察されました。腸のなかはほぼ消化されていて薄いオレンジ色の液体でした。
ここで田中先生が切り方の確認をしまして大丈夫との事だったのでさっくりと頭を割って見せて下さいました。軟骨魚類なので柔らかくて切りやすいのが嬉しいですね。

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まな板の上にあると食材に見えてしまいますね。脳や鰓など詳しく説明して下さいました。

年齢を調べる為に骨を使うそうでニシオテングザメで400歳が発見された事があるそうです。これだけ高年齢まで生きているのですから育つのにも時間はかかります。ミツクリザメは10〜20年で成体になるのでは無いかと推測されますが、他の400歳のサメですと成熟するまで150年ぐらいと推測され絶滅が心配されます。

参加者からの質問で食べれるのか?とありましたが水っぽいので水分を取れば食べられるとの事。味は基本的に無いので調理する時に味付けをする感じだそうです。余談ですがサメは食性により肉の味が変わるのでステーキで美味しく頂ける種類もあるそうです。

今回、珍しいミツクリザメの解剖を見学してさらにサメが気になるようになりました。サメの解剖図や解剖方法など公開して下さってる方々もいらっしゃいますので気になった方は是非ご自宅で確認して見て下さい。

個人的には硬骨魚類であれば解剖の経験があったのですが、軟骨魚類は未体験でしたので、今回の経験を活かして近いうちに捌いてみたいですね。

 

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