なみのりいるかの夢

しばらくは雑記です。

小説「星のように離れて雨のように散った」島本理生

 

 

燃えるような恋ではなく、微かな違和感から関係を見直し、自分を取り戻していく、緩やかな恋のお話でした。

「相手の意に沿わなければ、その相手を否定したことになると思っていたことだ」この言葉にグッときました。ついつい相手に合わせてしまいがちな所があり、他人とは別の人間だという境界をしっかり意識しないとなぁと改めて思いました。

読後、宮沢賢治の銀河鉄道の夜を読み返したくなります。色々な方向からの解釈はなかなか面白いものです。

 

涼しい部屋で冷たい飲み物と一緒に涼やかな読後を楽しめる小説でした。

小説 「Red」 島本理生

2020年2月21日に映画公開が決定した、島本理生先生の小説「Red」を再読しました。

 

Red (中公文庫)

Red (中公文庫)

 

優しい夫と可愛い娘、手伝ってくれる義母の居る恵まれた家庭の村主塔子と昔働いていた会社の不倫相手の鞍田明彦との激しくて切ないお話です。

友人の結婚式での思いがけない出会いから、友人含めての飲み、バーでの激しい関係と、冒頭から大きな波で翻弄されます。夫との関係でぼんやりと降り積もっていた不満と不安で出来た隙間にグイっと入ってくる鞍田明彦と新しい仕事場のチャラい小鷹淳と、塔子は揺れ動きます。どんなに頑張っても褒められる事のない主婦から、仕事で必要とされながらも、主婦というフィルターを通して見られ、不安を抱える中、鞍田からの誘いに求められる充足を感じて関係を重ねていきます。

鞍田の方も塔子を好きでいるものの、愛へと踏み込めないせいで、2人の関係は交互に波が生まれ、重なり合う事のないまま終わります。最後が結構衝撃的なシーンもりますが、透子にとって、娘の翠にとっても落ち着いたと言えるのかもしれません。

 

今回官能小説と銘打っているだけあって、エロいです。激しい関係から、チャラい誘いに、丁寧な関係まで、ドキドキしながら読み進めました。キス一つでこれだけ官能的になるなんて思いませんでした。また、島本理生先生の小説には毎回出てくる食事のシーンも最高です。体の関係とシャンパンや日本酒と酔いながら身体が熱くなるシーンもあります。個人的には天麩羅のシーンが美味しそうで好きです。

バーの片隅とか、家で夜に読書灯で読みたくなる小説でした。アルコールがあると官能的なシーンがより一層激しく感じるかもしれません。

 

映画はオリジナルのエンディングになるそうなので、どこに決着を持って行くのか、今から楽しみにしています。

小説 「夜 は お し ま い」 島本理生

Redの映画公開が来年に決まった島本理生さんの新刊「夜 は お し ま い」をやっと読むことが出来ました。

 

帯にある「性とお金と嘘と愛に塗れたこの世界を、私たちは生きている」が全てでした。

4つの短編はそれぞれ違う女性の性や愛に傷付き傷付ける話でもあり、1人の男性がそれぞれの女性をつないでいきます。傷付き悩み試して傷付けて、でも今は生きていると静かに終わります。自分は傷付いていると思う女性の方には、抉るような表現があるので、読むと辛いかもしれません。それでも、合間合間にある金井神父の言葉にもしかしたら救われていくかもしれません。

 

全ての方にオススメできる訳でもありませんが、自分の傷を確認して、消化出来るのであれば夜に読んでみて下さい。

小説 「ソラリス」 スタニスワフ・レム

Twitterでペンギン・ハイウェイの感想を検索してると時々出てきた「ソラリス」スタニスワフ・レムを読みました。

すごいゴリゴリのSFでした!2015年の新訳なので読みやすく、一気に読んでしまいました。読み終わった後の余韻が良いです。解説などもついて、ひとつの世界とそれらを構成する様々を一気に取り込んだ気分です。解説にもありましたが、「起源への問い」「存在への問い」「認識への問い」の3つがしっかり練り込まれたお話でした。1961年に原版が出版されていますのでSF好きな方には古典として履修してるのが当然なのかもしれません。今まで読んでなかったのがちょっと悔やまれます。ファーストコンタクト物としても押さえておきたい小説でした。

ちょっとだけ、神林長平の「敵は海賊・正義の眼」を思い出してました。活発度がかなり違いますけど、同じ海が出てきますし。

「ペンギン・ハイウェイ」には「スタニスワフ症候群」と海とが関係するところなのかな。「ソラリス」を読んだことのある方は、海が出てきた時点であの終わりがみえていたとすると切なすぎますね。どちらもネタバレ無しで読んで欲しいので、感想が難しい!でも、どちらも面白いし切ないので気になった方は是非秋の読書の1冊に加えてみて下さいね。

 

 kindle版はこちら

ソラリス (ハヤカワ文庫SF)

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ソラリス (ハヤカワ文庫SF)

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小説 「ペンギン・ハイウェイ」 森見登美彦

映画の公開も始まった森見登美彦さんの「ペンギン・ハイウェイ」は少年とお姉さんの不思議なお話です。

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

  • 作者: 森見登美彦,くまおり純
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/11/22
  • メディア: 文庫
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ペンギン・ハイウェイ (角川つばさ文庫)

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色々と不思議に思った事を観察したり考えたりしていくアオヤマ君とお姉さんとのやり取りは、とてもキラキラしていたり甘くふんわりしていたりと素敵です。草むらに現れたアデリーペンギンからはじまる物語は、コウモリやヒマワリ、シロナガスクジラに不思議な生き物ジャバウォックと繋がり、溢れていきます。少年の淡い憧憬と世界の捉え方に同級生とのやりとり、合間に挟まる大人達とのやりとりと読んでいて止まりません。

アオヤマ君の少年の問題はどのような行き先にたどり着くのか、ぜひ読んでたどり着いてみて下さい。

 

初夏から秋にかけて、長距離列車の中やお気に入りのオープンカフェで読みたい物語です。読み終わった後、コーヒーかコーラが飲みたくなるかもしれません。でも、夕方に読み終わると寂しくなるので、午前中に読み終わりたいものでした。

 

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ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

 

 出来れば文庫版で風に吹かれながら、流れる時間と共にページをめくって、読んで欲しい物語です。